ビデオ信号の「スーパーホワイト」 -輝度100%以上の取り扱い-  

このページでは、SDR Rec.709 のビデオ映像信号の「スーパーホワイト」について解説します。用語や表現は、技術的な正確さよりもわかりやすさを優先しています。コード値(CV: Code Value)は、原則として8bitの値(0(8)〜255(8))で表記しています。

先に結論

パソコンやスマホなどで動画を再生する場合、100%を超える明るさ、いわゆる「スーパーホワイト」の部分は欠落します。

そのため、WEB向けの動画制作で高輝度部の階調や色調にこだわる作品では、RGBそれぞれの値(結果的に輝度も)が100%を超えないよう調整する必要があります。

撮影時に色や露出を適切に管理し、撮って出しの状態を活かしたい場合でも、スーパーホワイトに情報が含まれるカメラ(記録モード)を使用している場合は、100%以内に収まるようレベルを下げる必要があります。  

Adobe Premiere Pro では、Lumetri カラーの「白レベル」を -35 前後に下げるだけで対応できます。

スーパーホワイトを含む素材を、Adobe Premiere Proを用いて表示させた様子
図1. S-Cinetoneで撮影したスーパーホワイトを含む素材を、Adobe Premiere Proを用いて表示させた様子
白レベルを-35.0まで下げて100%以内に収めた様子
図2. S-Cinetoneで撮影したスーパーホワイトを含む素材に対して、白レベルを-35.0まで下げて100%以内に収めた様子
ハイライトの部分を比較
図3. 図1と図2から、ハイライトの部分を切り出して比較した画像

図1〜図3は、SONY製カメラに搭載されている「S-Cinetone(エス・シネトーン)」で撮影した素材を用いています。

S-Cinetoneはスーパーホワイトを含め、約460%のダイナミックレンジを持つピクチャープロファイルです。  

未加工のままパソコンで表示するとスーパーホワイトが欠落し、図3の通り、高輝度部分の滑らかな階調がハードクリップされてしまいます。

なお、スマホのカメラやアクションカムで撮影した素材など、撮影時点で100%以内に収まる(スーパーホワイトを含まない)ケースもあります。  

波形表示を確認し、スーパーホワイトの有無を把握することが重要です。

なぜスーパーホワイト問題が存在するのか

パソコンやスマホでは欠落してしまうスーパーホワイトですが、業務用・放送用モニターや家庭用テレビでは問題なく表示されます。 

ビデオモニターでの表示例
図4. ビデオモニターにてスーパーホワイトが欠落せず表示されている様子 (SONY PVM-A170)

テレビ放送やパッケージメディアなど「テレビで視聴するもの」に関しては、スーパーホワイトの欠落を気にする必要はありません。

動画の視聴環境がテレビ中心から、パソコン・スマホ・タブレットへと広がり、これらのデバイスで高品質な動画再生が可能になったことで、スーパーホワイトの扱いに注意が必要になってきたと言えます。

技術的な背景

デジタルビデオの映像信号レベルは0%〜100%で定義されていますが、最大約109%まで許容されています。

家庭用・放送用カメラともに109%まで出力可能で、地上波・BS デジタル放送でも問題なく送出されています。  

最大レベルが100%ではなく109%なのは、デジタルビデオ信号の規格がアナログビデオ信号に由来しているためです。

アナログビデオ信号でも、最も明るい部分の信号レベル(電圧)が定められていましたが、信号処理の都合上、そのレベルを超えることが許容されていました。 

デジタル信号は最大レベル(フルビット)を超える信号は完全にクリップしてしまうので、アナログ信号に対して少し余裕をもたせて量子化レベルが定められました。

この余裕が信号レベル100%〜109%の部分で、スーパーホワイトと呼ばれます。

例えば、放送用カメラは約600%のダイナミックレンジを持ち、100%付近から600%の間はKNEE(ニー)機能によって109%以内に圧縮されます(設定で変更することも可能です)。

そのため、明暗差の大きいシーンではスーパーホワイト部分にも多くの情報が含まれます。

また、信号レベル100%以上に余裕があるのと同様に、信号レベル0%以下にも余裕が設けられています。  

約-7%まで記録可能ですが、「光が全くない状態よりも黒い被写体」は自然界に存在せず表示もできないため、0% 以下の映像信号(スーパーブラック)は、信号処理に伴うアンダーシュートなどを除き許容されていません。

デジタルビデオ信号の規格(ARIB BTA S-002 C1.0版)の一部を抜粋します。

映像信号レベルと量子化レベルの対応 8ビットの場合

Y又はR, G, B
220レベルを割り当てる。黒レベルを16(8)とし白ピークレベルを235(8)とする。注1
CB,CR
225レベルを割り当てる。信号は16(8)〜240(8)の範囲とし、0信号のレベルを128(8)とする。注1
ただし、量子化レベルは0(8)から255(8)とする。

--中略--

注1:黒レベル、白ピークレベル、色差信号ピークレベルは、それぞれ BTA S-001C で規定する 0mV、 700mV、±350mV に相当する。信号処理によっては、時おりこの範囲を越えることができる。

引用元:ARIB BTA S-002 C1.0版 1125/60方式HDTV映像信号の符号化とビット並列インタフェース規格

一方で、パソコン上の画像表示は、黒レベルを0(8)、白ピークレベルを255(8)としています。

そのため、デジタルビデオ信号規格に沿った動画素材をそのまま表示すると、黒が濃い灰色に、白がややくすんだ表示になります。

これを避けるため、ビデオ信号レベル0%〜100%、つまり8bitの16(8)〜235(8)の範囲を0(8)〜255(8)に伸張して表示します。

この処理によって、スーパーホワイト部分がクリップされてしまうのです。

次回予告

次回は、スーパーホワイトに関連して起こり得る問題と、ビデオリミッターについて解説する予定です。

※このページは、2015年4月に制作したこちらのページの内容を全面改稿したものです。

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